哀れなるものたち

映画レビュー

作品全体の印象

スチームパンク、ゴシックホラー、そして子どもの絵本のようなファンシーな世界観などを縦横無尽に横断しながら、
文字通り「旅」をするように”人間”という生き物について観察するような体験をさせてくれる映画でした
壮大な人間讃歌として素晴らしい傑作

レビュー

肉体、感覚的な探究から思考の世界へ、そしてそこから社会や他者との在り方についてと、自らの好奇心を満たす要素の成熟過程を辿っていく様が個人的には白眉。

絵作りも素晴らしく
モノクロで始まったと思えば、
極彩色かつコントラストバキバキの圧力強い絵作りへ、
ラストに向かう頃にはノイズと調和したような淡さが出てくるところまで、とても幅広い色彩の振れ幅。
さらに独創的な背景、道具に乗り物、建築や衣装に至るまで、とにかく視覚的にビビッドな刺激が満載

また、過激な表現を惜しまずに曝け出し、R18指定の作品。
それはまるで大人向けの絵本を見ているよう。
人体の解剖シーンや人体手術、そして性描写までがボカシやごまかしも無く真正面から描かれているが、不思議と露悪的なグロや官能的なエロを感じさせる事はありませんでした。
あくまでも人間についての好奇心や探究心へのワクワクが常に根底にあるような、そんな感覚。

そして、基本的にはずっと笑える映画です
もう哀れな人々の可笑しさの乱れ打ちに笑いの連続です
世界一汚いシャボン玉みたいなのが出てくるシーンなんかは、最後まで説明がないあたりがマジで最高でした。笑
マークラファロ演じるダンカンも最後まで本当にしょーもなくて、もう大好きでした笑

シーンの繋ぎやテンポも軽やかで、そしてラストにはカタルシスもある。
その為140分超のコッテリとした映画にも関わらず、鑑賞後の気分は爽やか。

壮大な冒険の旅を経て
今まで慣習的に使っていた”人間らしさ”って言葉を考え直したくなる。
そんなきっかけになった映画でした。

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